顔面痙攣とは:
顔面痙攣は、簡単に言えば、顔の半分が自分の意思とは関係なく動いてしまう病気です。動くといっても、表情を作るような動きではなく、ぴくぴくするといったほうが、適切かもしれません。顔面痙攣の場合、最初の症状は、瞼がぴくぴくするという症状であることが多いです。
瞼がぴくぴくするというと、そういえば、自分も瞼がぴくぴくすることがあるなあと思う人もいるかもしれません。私も、疲れたりすると上の瞼がぴくぴくすることがあります。でも、これは、あまり心配しなくて良いことが多いです。
顔面痙攣の初期症状の場合、なぜか、下の瞼が痙攣することがほとんどです。その痙攣は、下眼瞼から目の周り、さらに、頬から、唇の端へとひろがります。さら にひどくなると、頚のほうまで痙攣が広がる場合もあります。目の周りがぴくぴくするときに、眼科や、内科を受診することが多いようです。顔面痙攣という病気を理解していれば、適切に診断できますが、病気についてあまり知らない場合は、気のせいとか、気にしすぎと、精神的な問題と片付けられてしまう場合もあ るようです。
顔面痙攣の場合の痙攣の特徴は、顔の動きで痙攣が誘発されるということです。それは、瞬きや口の動きで、痙攣が出てしまうということです。とくに、“いー”や、“うー”で痙攣が出ます。“いー”といったときに、瞼や頬が痙攣します。
三叉神経痛とは:
三叉神経痛は、顔が痛む病気です。三叉神経とは、主に顔の感覚の神経で、脳幹を出てすぐに三本の枝に分かれます。一番目の枝は、眼神経(眼は眼という字です)、二番目の枝は、上顎神経(上あごのことです)、三番目の枝は、下顎神経(下あごです)というなまえで、顔に、このように分布します。
三叉神経は、人間の感覚神経の中で、最も痛みを強く感じる神経といわれています。眼の中に、まつげや、ごみが入ったりするとすごく痛みますね。これは三叉神経第1枝の、眼神経の痛みです。また、歯の痛みは、上の歯であれば、第2枝、下の歯であれば、第3枝の痛みです。三叉神経痛は、虫歯でもないのに、歯がすごく痛くなる病気といえば、わかりやすいかもしれません。あくまでも、これは、第2、第3枝に痛みが出た場合に限りますが。
でも、三叉神経痛は、第2枝、第3枝 に起こることが多く、激烈な歯、およびその上の顔の痛みとして自覚されます。痛みは、やけ火箸を当てられるような、とか、きりで刺されるようなという表現 がされ、あまりの痛さに、一瞬息も止まるほどです。痛みは、顔を洗ったり、歯磨きをしたり、食事をしたりすると誘発されます。風がほほに当たっても、激痛 が生じる場合もあります。食事をすることも、水を飲むことも困難になります。この病気も、昔はあまりよく理解されていなかったらしく、歯が痛むので、悪くもない歯をぬかれたり(というか、歯医者さんが歯はわるくないからといっても、本人が痛むから抜いてほしいといって抜いてしまう場合が多かったようですが)、さらに、抜く歯がなくなっても歯が痛いという、最悪な状態が起こったりしたようです。三叉神経痛の痛みの特徴としては、痛みの寛解期があるというこ とです。なぜか、痛みがひどくご飯も食べられない、顔も洗えない、外へも出られないという時期と、まったく症状がない時期があります。どうして、このような痛みの寛解期があるのかについては、明らかなことはわかっていません。
原因:
これらの病気の原因は、多くの場合、頭の中で、各神経に、(顔面痙攣なら、顔面神経に、三叉神経痛なら三叉神経に)近くにある動脈が当たって、神経を動脈が刺激しているためといわれています。また、まれに、脳腫瘍などが原因である場合もあります。特に、若い人にこのような症状が起こった場合、特に三叉神経痛の場合は、血管の圧迫以外の原因(脳腫瘍、血管奇形など)があることが多いです。
治療法
治療法は、顔面痙攣の場合は、内服薬、ボツリヌス注射、三叉神経痛の場合は、内服薬、神経ブロックなどがありますが、いずれも、効果は一時的です。
つまり、薬は飲み続けなければいけないし、注射は、打ち続けなければいけないということです。 顔 面痙攣、三叉神経痛ともに、根本的に治すには、頭の手術で、手術法は、神経血管減圧術といいます。これは、神経と血管をはがして、血管を移動させ、固定し、神経に血管が当たらないようにする手術です。あけるところは、耳の後ろです。もちろん、血管の圧迫以外の原因であった場合は、それに対する治療が必要 になってきます。
これらの疾患の適切な治療のためにはまず、適切な診断が不可欠です。症状を理解し、疑わしい場合は、脳神経外科か、神経内科を受診しましょう。